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BOOK|本のインタビュー

── とりあえず、最初にひとことどうぞ。
青田 コレクターによる京都発の本が完成しました!
海外のコレクターたちの協力も得て進めてきた4年間のプロジェクトの結晶です。出版を決意する以前に20年以上かかっていますし、情報量は、まちがいなく世界一だと思います。高価だと思われるかもしれませんが、それだけの価値はあります!
本当に好きな方には、必携の書です。
── どんな本なんでしょう?
青田 ビギナーのころから、「こういう本が見たい」と思い描いてきた夢の一冊です。全アイテムのラベルに書かれた契約発注番号、メーカー名、スペック番号の25年間の記録と、推定契約年度をまとめました。ジャケットだけではなく、トラウザーズ、スーツも網羅しています。写真で紹介するアイテムは日米のコレクターによる秘蔵の逸品です。また、日米各所での調査研究の成果も盛り込みました。
これまでの情報になにか疑問がある方や不足感のある方、もっと知りたいという方に、ぜひ手元に置いていただきたい一冊です。また、プロの方たちにとってのハンドブック的な役割も担えるのではないかと思っています。誰もが手軽に買える本というより、洋書風のリッチな「書籍」を目指しました。真摯なコレクターさんたちと分かち合えたらと思っています。
なお、写真のアイテムはなるべくプレーンなものを選定したので、ウォーアートやパッチ等、装飾に興味のある方には参考になりません。
── 新しい点は?
青田 ラベルに記載された情報をまとめたという試みはもちろん、そこから一歩踏み込んで、個々のものが「いつのものか」ということを推定した点が、これまでにない新しい部分かと思います。本というより、飛行服コレクション界を歩くための地図とでもいえるでしょうか。
あと、販売側の視点ではなく、あくまでも購入側であるコレクターの視点でまとめたところも、画期的だと思っています。
── 2万円とはまたお値段もゴージャスですね。
青田 自費出版ゆえという理由もありますが、内容と質を考えれば、むしろ安いくらいだと自負しています。
本の中のどのページを開いても、実際に現物を揃えようとすれば (買えればの話ですが) ン10万円はかかります。幸運にも現物を手に入れられたとしても、その一着から学べるものって個人の力では限界がありますよね。また置き場所や湿度管理はどうするのかといった、維持費の問題も出てくるでしょう。この本があれば、そうしたリスクを背負わずに俯瞰的な視点も含めてコレクションを楽しむことができるのです。
表に関していえば、自分の足で調べた場合、「これでほぼ全部見た」と自信を持てるようになるまでに、3年くらいはかかってしまうでしょう。インターネットを駆使したとしても、です。長い目で見れば、20,000円で情報を共有することができ、さらに、今後の大事な時間やお金を節約することができる、ともいえないでしょうか。
── ある意味、「たった」25年でよくこれだけ集められましたね?
青田 いくつか要因があるんですよ。
わたしが調査を始めた頃は、古着屋に行けばいくらでも現物を手にとって見ることができたんです。時代とともに店の奥に大事に陳列されていくようなものがね。そして、古着ブームの到来。このブームのおかげで、東京だけでなく地方都市でもデータを集めることができるようになりました。
最後は……これがなにより大きいのですが、インターネットですね。日本にいたら永久にお目にかかれなかった大きなサイズのものや、かさばるものなんかを見せてもらうことができましたから。あと、途中で誰かに抜かれてしまうことなく、本当に珍しいものを見ることができたこともありがたかったです。おかげで、コレクターとしては圧倒的に不利なはずの土地に住んでいても、こうして本をまとめることができました。今となってはどれ一つとっても、過ぎてしまった時代の話ですけど。
まあ、そうやって時代が変化していくときに、ふしぎといいポジションに立ってたんでしょうね (笑) 。
── 「いつのものか」って、間違いなさそうですか?
青田 モノにもよりますが、±1年の誤差程度に収まっていると思います。本では「会計年度」でまとめていますが、実際の年とは半年ずれているので、頭の切り替えが必要です。とかいいながらも、よくわからないところはエイヤーです (笑) 。
── 本を作成する際に意識したことは?
青田 25年前の自分がほしかった本を作る、つまり、駆け出しコレクターのためのガイドブック、という視点です。既存の情報にとらわれず、自分が納得できるところまで熟考を重ねた上で出したデータです。重みがありますよ (笑) 。
── ということは、既存の情報とは違うことも?
青田 調査はできるだけ一次情報までさかのぼるようにして、そこから構築してみました。そのため、これまで言われてきた情報とは食い違うところがあり、最初は受け入れられない部分もあるかと思います。
「これが正しい!」と主張するつもりはなく、あくまでも一個人の提案でしかないのですが、要は事実に語らせたのです。淡々と実物を見続け、さらに当時の写真や古い資料とつき合わせて、矛盾のないストーリーを作ってみると、どんな角度から調べても本書にまとめたような流れになってしまうように思えます。
活字の魔力というのでしょうか、一度雑誌で謳われたことって、そのまま鵜呑みにされてしまう傾向が強いようです。「雑誌に載ってたことは、とにかく正しい!」という先入観を捨てれば、解決する矛盾ってけっこうあるんですけどね (笑) 。
── 初公開のアイテムが多いそうですが?
青田 アイテムに関しては、一つをのぞき、すべて初公開です。日米のコレクターの秘蔵の逸品で、そう簡単には見せていただけない貴重なコレクションばかりです。
実際に確認してきたからこそ言えるのですが、有名なアメリカの博物館にもないような貴重なアイテムを多数扱っています。この本を持っている方とそうでない方とでは、コレクションの質が、今後大きく変わっていくことでしょう。
実際にコレクターに用意していただいたアイテム数は数千 (?) にもおよび、そのうち、約300着を使用させていただきました。ちなみに、本に掲載している写真数は約800点です。
ラベルやジッパーのクローズアップにも力を注ぎました。
白黒写真のほうは、当時の報道用と軍のオフィシャル用のものがあり、一部をのぞき、コピーではなくオリジナルを使用しています。すべてわたしが本のために集めたコレクションです (笑) 。なるべく未公開と思われるものを選定しました。
── ジッパーのページ、チカラ入ってますねえ。
青田 よくぞ聞いてくれました!もともとはジッパーに興味があったんですよ。
っていうか、今もそうなんですけど (笑) 。
本のあとがきにも書きましたが、ジッパーの製造年代を知りたいがゆえに飛行服を調べ始めたんです。それがきっかけ。なので、この本はジッパー・コレクターの視点で飛行服をまとめた本ともいえます (笑) 。
── 4年間、具体的にどんなことを?
青田 きっと1日かかっても話し切れないので、コレクターとコンタクトをとってからのことに絞りましょうか。コレクターにプロジェクトの説明をし、了承を得て撮影に入ります。その後は、写真編集や記事の執筆、校正。と同時にリサーチも相変わらず続けていましたし。渡米は3度ですね。帰ってくる度にデータがごそっと変わったり仮説が音を立てて崩れ落ちたり……。4年前と今とでは、データに関する知識も雲泥の差です。その当時の自分がいかにわかってなかったか、ということを痛感させられます。4年前に出さなくてよかった…… (笑) 。
もともとはジッパーの研究途中に飛行服で道草を喰っていたような内容ですから、まあこれだけ時間かかったけどしようがなかったのかな (笑) 。
── よく続きましたね?
青田 いや、とにかくおもしろいから (笑) 。
ジグソーパズルを仕上げていく感覚なんですよ。やめられないんです。
情報収集を始めたのは25年前ですが、アイテムを購入する際には、「これは将来自分の本で必要なものか?」ということを強く意識してきました。もうこの本が卒論です。でないとやめられない (笑) 。
── 同じような調査をしている方は?
青田 博物館や大学等では、この分野はふしぎと調査研究の対象になっていないようなのです。また、コレクターやマニアなら、同じような調査をしているように思うのですが、そうしたデータが公開されることもありませんでした。誰でも時間をかければできるとは思いますよ。まあわたしの場合は、運や人、時勢にも恵まれましたが。
── 最後にひとこと。
青田 完全ではありませんが、一個人が長年見てきた現場の記録であり、25年間、初心者の気持ちを貫いてできた集大成です。
これ一冊で1970年代以前の飛行服の全体像が把握できるようになっています。マニアさんが決して教えてくれない情報が満載 (笑) 。
販売サイドの方にも、コレクターの視点を知る上でご購入いただければ幸いです。
ジャンルを問わず、日本人の趣味のあり方に一石を投じる本になればと願っています。

(C)Aota Mituhiro